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東京地方裁判所 平成6年(ワ)2276号・平5年(ワ)8368号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  反訴被告は、反訴原告に対し、別紙物件目録記載三の建物を収去して、同目録記載一及び二の各土地の明渡しをせよ。

三  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、原告(反訴被告)の負担とする。

四  この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

(本訴)

一  原告

1 原告と被告との間において、原告が別紙物件目録記載一及び二の各土地について、次の賃借権を有することを確認する。

契約日 昭和四七年四月一日

目的 建物所有

期間 三〇年

賃料 一か月二六万円

(毎年一二か月分を二回に分け、三月末日及び九月末日に六か月分を被告の指定する口座に振り込んで支払う。)

2 訴訟費用は、被告の負担とする。

二  被告

主文と第一、第三項同旨

(反訴)

一  反訴原告

1 主文第二、第三項同旨

2 仮執行の宣言(主文第二項につき)

二  反訴被告

1 反訴原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、反訴原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  本訴請求原因

1  原告(反訴被告、以下「原告」という。)は、進藤喜明(以下「喜明」という。)から、昭和四七年四月一日、別紙物件目録記載一及び二の各土地(以下一括して「本件土地」という。)を目的・建物所有、期間・五年(借地法二条の定めにより三〇年となる。)、賃料一か月一〇万円(毎月末日払)の約定で賃借した(以下本件土地についての喜明(ひいては被告)と原告との間の賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。)。

2  喜明は、被告(反訴原告、以下「被告」という。)に対し、昭和五九年三月ころ、本件土地を贈与し、被告は、本件賃貸借契約における賃貸人の地位を承継した。

3  その後、本件賃貸借契約の賃料は一か月二六万円に、その支払方法は前記第一、(本訴)、一、1記載のとおりに変更された。

4  被告は、本件賃貸借契約は既に終了したとして、原告に対し、本件土地の明渡しを求めている。

5  よって、原告は、被告に対し、原告が本件土地について前記賃借権を有することの確認を求める。

二  本訴請求原因に対する認否

1  請求原因1のうち、原告が喜明から原告主張の日に、本件土地を賃料一か月一〇万円で賃借したことは認めるが、その余は否認する。期間は一年の約定であった。

2  同2(ただし、贈与の日は、昭和六〇年八月一四日である。)ないし4は認める。

三  本訴抗弁及び反訴請求原因

1  本件賃貸借契約は、プレハブ建ないしバラック建程度の建物の所有のために、一時使用の目的で締結されたものである。

2  したがって、当初の契約時から、借地法の適用のない賃貸借として、期間は一年とされ、一年ごとに更新を繰り返してきたものであって、平成五年三月三一日の契約期間の満了とともに、本件賃貸借契約は終了した。

3  原告は、本件土地上に、別紙物件目録記載三の建物(以下「本件建物」という。)を建築所有している。

4  よって、被告は、原告に対し、本件賃貸借契約の終了に基づき、本件建物の収去と本件土地の明渡しを求める。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁及び反訴請求原因1、2は否認する。

2  同3は認める。

第三  証拠関係

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本訴請求について

1  原告が、喜明から、昭和四七年四月一日、本件土地を、賃料一か月一〇万円、建物所有の目的で賃借したこと、被告が、喜明から本件土地を贈与され、本件賃貸借契約の賃貸人の地位を承継したことは、いずれも当事者間に争いがない。

2  そうすると、本件の唯一の中心争点は、本件賃貸借契約が一時使用の目的で締結されたものかどうかということになる。

(一)  右争いのない事実と甲第一ないし第四号証、第五号証の二ないし四、第六号証の一ないし六、第七号証の一、二、第八、第九号証、乙第一ないし第八号証、第一〇、第一一号証、第一二号証の一、二、第一三号証の一ないし三、第一四、第一五号証、第一七号証の一ないし一四、証人進藤喜代子の証言、原告代表者及び被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。

(1) 被告の兄喜明は、本件土地を、昭和三〇年ころ、昭和一七年の父の死亡に伴い家督相続していた土地と交換取得したものであるが(もっとも、登記簿上は、昭和四七年六月一日及び同月一〇日に、いずれも同年五月三〇日売買を原因として前所有者桜田機械工業株式会社から喜明へ所有権移転登記がされている。)、被告らの母進藤喜代子がその管理に当たってきた。そして、喜代子及び喜明は、父の遺産に代わるものとして、いずれは被告の居住用に贈与することを予定していたので、他に賃貸することは考えていなかった。

(2) 原告は、アルミサッシ・その関連製品の販売、設計、施工、製造と加工等を主たる目的として昭和四六年一二月二一日に設立された株式会社であって、その当時、作業場等を建築使用する土地を探していた。

(3) 喜代子は、昭和四七年ころ、喜明の所有していた他の土地の賃借人であった辻木材の辻喜久男の紹介により原告代表者山田學から、本件土地を当座の原告の倉庫、作業所として貸してほしいと申し込まれた。

喜明及び喜代子は、当時、本件土地について格別の利用目的を有していなかったものの、本件土地の前記のような予定から、その妨げになることを恐れて、一度はこの申し込みを断った。

しかし、辻から本件土地の明渡請求があった場合には、いつでも明渡しに応じることを保証する旨の申入れがあり、また、山田からも、最近独立したばかりで用地の確保に困っており、一時貸しでもよいから是非貸してほしいと懇願されたので、喜代子は、一時貸しを条件に本件土地の賃貸に応じることとなった。

(4) 以上のような経緯で、喜明は、原告に対し、昭和四七年四月一日、一時的建物所有の目的、期間一年、賃料一か月一〇万円(もっとも、契約書上は一か月六万円と記載されている。)で、本件土地を賃貸する旨の契約書を取り交わして、これを賃貸した。

(なお、甲第五号証の一によれば、喜明と原告間に、右同日付で、期間を五年、普通建物所有の目的の土地賃貸借契約書が作成されていることが窺えるものの、喜明作成部分の真正な成立を確定するに足りる証拠がないのみならず、成立に争いのない甲第五号証の二によれば、右同日付で(甲第五号証の二によれば、契約書の日付け「昭和四七年四月一日」の「四七」が「四十八」に、期間「昭和四十八年三月三十一日まで」の「八」が「九」に訂正されていることが明らかである)、一時的建物所有の目的、期間・昭和四八年三月三一日までの一年とする右甲第五号証の一の契約書とは別の賃貸借契約書が取り交わされ、翌年、新たに契約書を作成することなく、右甲第五号証の二の契約書を利用してその作成日付け及び期間部分を訂正することによって更新契約の契約書にあてたものと推認され、さらに、成立に争いのない右甲第五号証の二、三、乙第二ないし第八号証、第一〇、第一一号証、第一二号証の二によれば、昭和四九年以降も同様に期間を一年として更新されてきたことが認められるので、右甲第五号証の一の存在は、当初から期間一年とする契約が成立したと認めることの妨げとはならない。)

その際、原告は、一時使用のための賃貸借であることを明確にする趣旨で、喜明から本件土地の明渡請求があった場合の速やかな原状回復及び明渡しを誓約する旨の誓約書を差し入れ、辻においてもこれに保証人として署名押印した。

このようにして、本件賃貸借契約が一時に限り使用する目的での賃貸借であることについては当事者双方が明確に理解、了解して、締結されたものであって、本件賃貸借契約締結に際し、権利金や敷金の類の金銭の授受は一切されていない。

(5) 原告は、昭和四七年五月一二日付けで東京都公害防止条例に基づく工場設置許可を、同年、六月六日付けで建築確認通知を受け、本件土地上に本件建物を建築し、以後これを原告の倉庫、事務所、作業所として使用してきた。また、原告は、本件建物につき保存登記を受けていないものの、固定資産税を納入し、本件建物の所在地をその本店所在地として登記している。

しかし、本件土地は、都営住宅に囲まれており、必ずしも工場等として使用するに適した場所ではなく(右のように公害防止関係の許可が必要とされていることからもこれは窺える。)、原告においても、前記のような賃借に至る経緯から、会社がうまく行けばきちんとした自前の土地を取得することを意図し、今日に至るほどの長期間賃借することは考えていなかった。

(6) その後、本件賃貸借契約は、「土地一時使用貸借契約書」を毎年取り交わして更新され、結果的には、平成五年三月三一日まで二〇年以上にわたって継続してきた。

その間、喜明は、被告に対し、昭和五九年ころ、本件土地を贈与し、被告は、本件賃貸借契約における貸主の地位を承継した(乙第一四、第一五号証によれば、登記簿には、喜明が本件土地の持分三分の一ずつを、昭和五九年から昭和六〇年にわたって贈与した旨の記載があることが認められるものの、これは、最初の年に贈与したものの、贈与税対策上、右のように分割されたものと推認するのが合理的である。)。

(7) 被告は、本件土地の贈与を受けて間もなく、原告に対し、本件土地の返還を求めたが、結局話合いがつかなかった。ただ、山田は、常々、喜代子ないし被告に対し、次のような税金問題が解決すれば、本件土地の明渡しに応じる趣旨の応答をしていた。

そして、山田は、本件訴訟においても、明渡す考えはあるが、税金問題―すなわち、二〇年以上にわたって賃貸借契約が継続したことになるので、課税当局によって通常の賃貸借契約であると評価され、無償で明け渡すとそれを寄付とみなされ、多額の課税をされる恐れがある。―が解決できない限り明渡しに応じられない、本件本訴もその権利関係を明確にすることを主たる目的として提起した等と陳述している。

(8) そして、被告と原告との間に、本件賃貸借契約について、新たな更新の合意がされることなく平成四年三月三一日の更新契約に基づく一年の契約期間が平成五年三月三一日をもって満了した。なお、被告は、原告に対し、平成五年に入ってから、更新に応じない旨を表明している。

被告は、本件土地に自己の居宅を建築する予定であり、原告は、昭和六三年ころ、千葉県内に本件土地の代替地となる土地を取得し、工場を建築使用している。

(二) 以上認定の事実によれば、原告と喜明(ひいては、被告)との間の本件賃貸借契約は、当初から、暫定的に原告が倉庫、作業所を建築使用するために、一時使用の目的で締結されたものであることが明らかであり、喜明らが借地法の規定を潜脱する意図に出たものとは到底認められないから、本件賃貸借関係が結果的には二〇年余の長きにわたって継続してきたものではあるが、借地法九条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」に該当するということができる。

なお、証人進藤喜代子の証言によれば、喜明から被告への本件土地の贈与に関する税の納付に際して、被告らが、本件賃貸借契約が通常の(長期の)賃貸借契約であることを前提とする申告をしたことが認められるけれども、それは、ひとえに節税のためであったと推認することが可能である(右のとおり、結果的には二〇年を超えて継続してきたものである以上あながち不当なものとも評価し得ない。)から、この事実は、何ら右認定判断を左右するものではない。

3  そして、前記事実によれば、本件賃貸借契約は、平成四年三月三一日の更新の際定めた期間の満了の日である平成五年三月三一日の経過によって終了したものというべきである。

したがって、被告の本件賃貸借契約終了の抗弁は理由がある。

二  反訴請求について

1  本件賃貸借契約が期間満了により終了したことは本訴請求について説示したとおりである。

2  そして、原告が、本件土地上に、本件建物を所有していることは、当事者間に争いがない。

三  結論

以上の次第で、原告の本訴請求は理由がないことになるからこれを棄却し、被告の反訴請求は理由があるので認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官赤塚信雄)

別紙物件目録

一 東京都江東区東砂二丁目三一番九

宅地 272.53平方メートル

のうち、別紙図面表示イ・ロ・ハ・ニ・イの各点を順次直線結んだ範囲内の部分204.46平方メートル

二 同所七五番七

宅地 412.08平方メートル

のうち、別紙図面表示ホ・ヘ・卜・チ・ホの各点を順次直線結んだ範囲内の部分282.49平方メートル

三 同所三一番六

家屋番号(未登記)

組立ハウス(軽量鉄骨造カラー鉄板葺)平家建 倉庫・作業場

床面積 189.59平方メートル

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